なんでもないはなし

「週末は雨みたいですね。」

窓を開けながら同僚が言った。

「へぇ、そうなんですね。」

と返答して、何か一言付け加えようとしたけど何も思い浮かばなくて、こそこそと自分の部屋へ入り、扉をしめた。

しめたあとに、続きの言葉を考えていた。意味ないのに。

 

仕事はみんなと違う部屋で1人でしている。

子どもたちと関わる仕事なので、朝、昼はわいわい過ごしているし、その時間だけパートさんが来ているのでさみしくないけど子どもたちが帰った夕方は隣の部屋の話し声とか笑い声とか聞きながら1人でパソコンとにらめっこしている。

少し前までは夜にも子どもたちが来ていたので、それも終わったあと部屋で節電のために電気を半分消して、半分真っ暗な部屋でまた1人でカタカタ作業していた。

1人で働くのはもう2年くらいずっとそうなので慣れた。

 

「週末は雨みたいですね。」

「ずいぶん寒くなってきましたね。」

「気温が安定しなくて服装に困りますね。」

とか、話を、した方がいいんだろうなって思いながら、なんだか億劫で黙ってしまっているこのごろ。ここ2〜3ヶ月くらい。大人の前でももっと笑ったほうがいい。

 

仕事とはまた別で、お店の2階で夜な夜な絵を描いていて、時々、お店のにぎわいが聞こえてくることがある。

1人違う世界にいる感覚、仕事のときと同じなんだけど、お店のにぎわいを聞きながら作業するのはとても安心した。

ほんのり音楽が聞こえてきて、話し声らしきものが聞こえてきて、笑い声が聞こえてきて、よかった、暮らしがある、大丈夫、という気持ちになる。

 

絵が仕上がってしばらくして、そのお店のにぎわいに混ぜてもらうことがあった。

自分は2階にすみつく妖怪で、人間たちの暮らしを感じながら妖怪としての責務を全うするだけだったので、良いのかなって思いながらたくさん話して笑って、人間の暮らしの中に入り込めて、うれしく、いい時間だった。

 

思えば、自宅にいるときだって1人だし、買い物をするときも、どこかで本を読むときも、1人でいることって普通で当たり前なのに、なんで寂しいと思うんだろう。

なにか条件が重なったとき、「あー寂しいなぁ」って思う気がする。

それは仕事をしているとき、絵を描いているとき、家にいるとき、誰かといるとき。

同じことをしていても寂しいなって思うときと1人が気持ちいいときと、ある気がする。

 

でもだからこそ、寂しいなって思ったことがあるからこそ、あつまったときに楽しいなって思えるんだろうし、出会えたときにうれしいなとかおもしろいなとかがあるんだろうから、寂しさがあってよかったよねと思う。

 

土曜日の朝、外に出ると雨のにおいがして、空が白く光っていて、

「週末は雨みたいですね。」

って同僚の声が頭の中にぽつり響いたので、文章を書きたくなって書きました。

 

さいきんは休みの日に雨がかぶっていやですね。

ちょうど見たい映画と読みたい本があるので部屋でゆっくりしようと思います。

夜はあつまりがあって、食べ物をもちよることになってるのだけど、何にするか全然思いつかなくて、どうしようかな。何がいいと思いますか?

 

夜はだいぶ冷えるようになってきましたね。

あったかくして寝ないと風邪ひくから気をつけてくださいね。

あまりがんばりすぎないで休めるときにゆっくり休んでくださいね。